20230501-朗読劇『私の頭の中の消しゴム 14th Letter』

朗読劇『私の頭の中の消しゴム 14th Letter』を観た。

14回目の上演。今まで宝塚OGさんや声優さんなどがいろんな組み合わせで出演した作品です。演目は知っていたけど、観劇するのは初めて。

私が観たのは中尾暢樹さんと綾凰華さんのペアでした。中尾くんはジュウオウジャーを観ていたし、刀ミュも観たし、何よりCHaCK-UPマルくんのお友達なので、ご恩もご縁もあるお方。あやなさんは言うまでもなく。このお二方が並んでいる光景は私にとって不思議で仕方ありませんでした。

中尾くん演じる浩介は、荒っぽくてぶっきらぼうで不器用な男性。実は子どもの頃に深く傷ついた経験があり、それを他人に見せないよう心の奥に仕舞い込んでいる、閉じた部分がある人。一方あやなさん演じる薫はオープンな性格で、圧倒的に“陽”。社長令嬢でバリバリ仕事をしていて恋にまっしぐらの、「女の人生、謳歌してます!」って感じの人。スクールカースト高そう。そんな二人が出会い、恋をし、結婚するが、ある日薫が若年性アルツハイマーであることが発覚し……というストーリー。

なるほどこれはつらいなー。こういうお話って、家を忘れ、思い出を失い、ついには最愛の人の顔までわからなくなる……のがつらい!泣く!という点を売っているんだろうなと勝手に思っていたけど、単純に忘れていくだけじゃなくて、性格が変わって“その人”がいなくなってしまうのがつらかった。しかもそんな生活の隙間隙間で、元の薫がひょっこり顔を覗かせる。「いつもありがとう。私、大丈夫?ごめんね」って……戻ってきたかと思えば、またいなくなる。浩介がかわいそうでかわいそうで。こんなのたまんないよ。そうやって必死で一緒に生きてきたのに、ある日薫は姿を消してしまう。俺はお前と一緒にいたいからがんばってるのに……!

でも薫の気持ちもよくわかる。迷惑かけるくらいならいなくなりたい。愛してやまないから。浩介には浩介の人生を歩んでもらいたいよ。こんなに素敵な人が、私なんかのせいで人生を棒に振るなんて耐えられない。わかる、わかるよ〜。私も「ボケてわけわかんなくなる前に消えてなくなりたい」って、ちょうど職場の人と話したところ。健康で素敵な人たちの時間を奪いたくない。優しさにつけこみたくない。幸せでいてほしいよ。「愛する人を傷つけたくない」って、当たり前の感情だよね。

あやなさん演じる薫は、キュートで朗らかで感情豊か。こんな人が身近にいたら私も好きになりそう。なにせあやなさんだし。浩介が薫の第一印象を語る台詞の中に「細くて」という言葉があった。ぴったり。最後、ふんわりとした真っ白のノースリーブのワンピースを着て登場した薫は、まるでたんぽぽの綿毛みたいに、ふっと吹いたら舞い上がっていなくなってしまいそうだった。

アルツハイマーの症状が深刻になると、薫の座り方が変わる。最初は美しく脚を揃えて座っていたのに、だんだんとだらしない座り方に。脚を揃えない、まっすぐ座らない、頭が傾く。一方、最初は斜に構えるような態度で行儀悪く座っていた浩介が、薫と反比例するように、まっすぐ、しっかりと姿勢を正していく。浩介と薫が対比になっていた。

というか、あやなさんの演じる姿を見るときにときどき抱く感覚……そこに体はあるのに、あやなさんがいない、体からあやなさんが抜けてる、みたいなやつ。またそれだった。薫があやなさんに入り込みすぎてるのが不安になってしまって、実はあまり泣けなかった。涙や鼻水を拭きに行きたかった。あやなさんの演技が大好きで、退団後もこうして渾身の演技を観られることが幸せ。でも一方で、繊細すぎて、憑依されすぎてしまって、しんどくないだろうかと心配になる。勝手に。誰目線?

ここの台詞わかんないとか、この展開おかしいだろとか、そういうところがなかった。何度も繰り返し演じられてきた作品……たくさんの人の手によって磨かれてきたからこそなのだろうと思った。 セットも衣装もシンプルできれい。壁に貼ったメモがはらはらと落ちていくのがおしゃれだった。どうやって付けてたんだろう。マグネットで留めてあって、落とすときに壁の後ろで何かしてるのかな。あの手の演出を見ると仕掛けが気になって仕方なくなる。

ただ、出ハケが全然なくて大変そう。あやなさんはまだ何度かハケてたけど、中尾くんは2時間出ずっぱり喋りっぱなし。何も飲んでなかった。水を飲んだり、メイクを直したりするためにも、ハケや暗転は適度に挟み込んでほしい……そこでテンポを崩さないようにどうにか繋いでさ。

中尾くんがあやなさんに、あやなさんが中尾くんに結婚指輪をはめてた。あやなさんが中尾くんにジャケットを着せてた。ジャケットの着せ方が上手かったのは、男役としての経験ゆえかな。ちょっと微笑ましかった。あやなさんって中尾くんと並ぶともっと小さいかと思ったけど、意外とそんなに変わらず。ヒールは3cmあるかないか。そんなあやなさんが、中尾くんと並ぶときに少し膝を曲げるのがおかしかった。中尾くんと向き合って手を繋ぐ場面では、膝を曲げて上半身のけぞってた。私があやなさんと握手したときみたいじゃん。

あやなさんにとっては初めての、男性の相手役。ファンとしてすごくドキドキしながら今日を迎えたけど、相手が中尾くんでよかった。誠実で、ひたむきで、まっすぐにあやなさんのことを見つめていて。正直な話、「たとえ中尾くんであろうと、あやなさんの手を握ったりしたら私怒ってしまうかもしれない!」と友人に話していたのだけど、まったくそんなことありませんでした。あやなさんのみならず、中尾くんも素敵な俳優さんだなと改めて思いました。

浩介にとって、薫が過去の人になったらいいな。「あんなつらいこともあったな」って、穏やかに思い返せる日が来たらいい。ひどい生傷のまま、化膿して、取り返しのつかないことにならないように。……あんなでっかい傷、癒えるのかな。

記憶なくしたくないなー。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA