台風一過。
カモのヒナたちは無事だろうかと、あの公園に行ってみたら、いなかった。一羽も。
公園には、ヒナを探しているのであろう人間たちがうようようろうろ。
どこへ行ったんだろう。
大変な風雨だった。
台風の影響で大雨と強風。別に暴風域に入ったわけでもないのに、とても台風らしい天候だった。
昼休み、職場のそばのパン屋で昼ごはんを買って店を出ようとしたら、店外から聞いたこともないような轟音。見ると街路樹が倒れんばかりに風になびいていた。店から出るのを躊躇って、外の様子を呆然と眺めていたら、店員さんが苦笑いで「すごいですね」と声を掛けてきた。私も苦笑いで「そうですね」と返した。
風が止むタイミングを見計らって外に出ると、ビニール袋に入ったままのトイレットペーパーの束が地面にゴロゴロ転がっていた。近くのドラッグストアから吹き飛ばされてきたものだった。店員さんも、トイレットペーパーの束に負けない勢いですっ飛んできて、大事な商品を回収していた。私も少し手伝った。
大人たちがそうしている間、下校中の小学生たちはキャーキャー叫びながら楽しそうに団子になっていた。まるで、ペンギンのヒナが身を寄せ合って、吹雪をしのぐように。子どもは無邪気でいい。
出勤途中で、頭に鳥のフンをくらった。
いつもの時間に、いつも通り、いつもの道を歩いていた。ラーメン屋の隣あたりで、頭のど真ん中に小さな衝撃。一瞬で「やられた」と理解した。恐る恐る左手の小指で触れてみると、フンが少しだけ指先についた。そこで確定。私は頭のど真ん中に、鳥のフンを受けたトンデモラッキー人間になった。
職場までは歩いて10分弱の距離。とりあえず歩みを進めなければならない。最初は少し頭を下げて歩いていたけど、そうすると向かい側から来る通行人に頭上のフンを見せびらかしてしまっていることに途中で気づき、背筋を伸ばしてまっすぐ前を向いて歩くようにした。それでも頭上の異物は目に入るだろうから、一応手で覆い隠した。
しばらく歩くと、職場の先輩の背中が見えた。早歩きで先輩に近づき、挨拶するや否や「私、頭に鳥のフンくらいました!」と報告。驚く先輩。でも先輩は冷静で、近くの公衆トイレを指して「とりあえず洗ってきな!」とアドバイスしてくれた。出勤時間が迫っていたけれど、こればかりは仕方ない。「職場のみなさんに伝えておいてください」と言い残して、公衆トイレに駆け込んだ。
公衆トイレで頭を洗ったのは初めてだった。誰が何を流したかもわからないシンクで、一心不乱に前髪付近の髪を洗い流した。途中、普通にトイレを利用しに来た女性がいて、入口で一瞬立ち止まったのが視界に入った。そりゃそうだ。お世辞にも綺麗とは言えないトイレで頭を洗っている成人女性と出くわしたら、足が止まるだろう。「違うんです、ただ頭を洗っているわけではなくて、先ほど頭に鳥のフンを受けまして」と釈明したくなった。
でも、今回受けた鳥のフンはさほど大きくなくて助かった。以前、トンビか何かのフンを肩に受けたことがあるのだけど、あれは凶悪だった。体が大きいとフンも大きい。あれはグロテスクだった。今回のは、たぶんスズメか、せいぜいハトだろう。
さらに助かったのは、職場にドライヤーがあったこと。少し遅刻して職場に入ると、先ほどとは別の先輩がドライヤーをセットして待っていてくれた。「大丈夫?」と言いながらドライヤーを差し出してくれたとき、嬉しくて嬉しくて「好きです」と言いそうになった。
それにしても、ただ街を歩いていたら頭にフンがヒットするなんて、そう経験できるものじゃない。私もびっくりしたけど、もし私が鳥側だとしてもびっくりしただろう。恐らくその鳥は雑居ビルの屋根か、電線の上にとまっていた。そこで何気なくフンをしたら、下を歩く人間の頭に着弾したのだ。高さもある。人間の歩くスピードもある。複数の条件を掻い潜って、自らの落とし物が通行人の頭に。これはすごい。私も鳥もラッキーだ。
実は、身体に野鳥のフンをくらうのは初めてじゃない。これで5回目。中学生の頃から始まって、肩や、胸や、手や……。私は何を引き寄せているのだろう。
今後は帽子と日傘。これだな、必勝法は。
ホラー映画を難なく観られるようになりたい。
夏頃公開予定のホラー映画を、映画館で観たいと思っている。キャスト目当て。動員数の”1”になりたい。でも予告映像の時点で映像を直視できていない。小さなiPhoneの画面すら見られないのに、はたして映画館のスクリーンおよび音響に耐えられるのか。
怖いものに対する好奇心は強く、観たいホラー映画や行きたいお化け屋敷はたくさんある。でもとにかくゴア描写が苦手。お化けやジャンプスケアはある程度平気なのだけど、痛い描写全般無理。あ、汚い系も嫌かも。だからホラーに限らず、裏社会系が観られない。
ホラー映画が好きな人は、観終わった後「これが現実じゃなくてよかった!」と安堵するらしい(人によるのだろうけど)。私は真逆で、まるで現実に起こったことのように痛みを感じてしまう。見方がそもそも違うのだ。
私も夏までに、その視点を手に入れたい。さもないと映画館で気絶しかねない。
2推しというものは必要だと思う。
昔はいろんなものが好きだったけど、就職して余暇が少なくなったためか、はたまた加齢により興味のアンテナが弱くなったためか、「推し」が減った。
推しが減るとどうなるかというと、その推しに何か不測の事態が起こったときに、メンタルをごっそりもっていかれる。だから「2推し」=1推しに何かあったとき「でもこの人がいるから大丈夫」と思わせてくれるような存在を作っておいた方がいい。
と思ってジャニーズJr.を調べてみているんだけど、まあ見つからない。だって「推し」って探して見つけるものじゃなくて、ある日突然出会ってしまうものだもんなあ。
とりあえずJr.出演舞台には行くことにした。ないかなあ、運命の出会い。
宗教勧誘に遭いやすい。
「そういう」人の目からは、カモになりそうな人間に見えるんだろう。どういう判断基準なのか。流されやすそうに見えるのだろうか。話を聞いちゃいそうな。断れなさそうな。
あいにく私はスッパリ断れるタチの人間。むしろ内心で「また面白い話のネタができたぞ」とほくそ笑みながら少し会話をして逃げる。
今日の勧誘は新手だった。「おまじないをかけさせてほしい」とかなんとか。いくらなんでも怪しすぎるだろう。「本当ですか!お願いします!」と乗っかってくるとでも思っているのだろうか。
宗教勧誘を生業としている人々にアドバイスがある。本当に勧誘を目的としていない人は、赤の他人に話しかける際に「これは勧誘じゃないんだけど」とは言わない。そのワードが出るだけで胡散臭さ倍増なので、言わない方がいいですよ。